Amishの住宅建築〜創作のコミュニティ

By 2020年3月4日ビジョン

(Photo by randy fath)

10年前に、私はニューヨークから車でペンシルベニア州のLancasterというAmishの里に旅をした。

Amishとは、アメリカ各地に数十万人ほど居住している。スイスなどから移住して来た白人の敬虔なクリスチャンで、電気やガソリンを使用しない。電話は、一地域に一個だけ共有しているようだ。連絡を取る場合は、ローカル紙と、手紙と、広場に座って顔を合わせて話すしかない。

石油を使わないので、自動車がない。代わりに、バギーという馬車か、自転車を利用して、買い物に行く。そのため、食料品店には、馬車の駐車場があった。少しくらい車があるかと思ったが、彼らは徹底してガソリンを使用しない。宗教的な取り決めがあるからである。Amishがなぜ地下資源を使わないのかは、最重要ポイントだが説明が長くなるので、ここでは住宅建築に議論を絞りたい。

普通の工務店に住宅建築を依頼すると、多くの下請け業者を使うため、コストが高くなるが、Amishは、村の男たちが集まって協力するため、大幅にコストが低くなる。というより、建築費ゼロなのだ。

経済学に比較優位の法則という理論がある。面倒くさいことをする手間は、お金を払って外注した方が合理的だということ。日本の農産物は高いので、中国や途上国から安く買った方が良い。だから日本の農業はいらない、などと言っている政治議論が日本にある。

紀伊國屋門左衛門は、美味しいみかんを和歌山で非常に安く仕入れて、船を使って嵐の中を輸送し、江戸で非常に高く販売することに成功して巨万の富を得た。

Amishの住宅建築は、経済学の比較優位の法則の正反対を選択している。経済合理性と、人間性は一致しない。日本の戦後の高度成長期から現在もまだ続いている新築住宅を優遇する政策(建築規制、住宅ローン減税、新築の優遇税制等)は、比較優位の法則に基づいて正しく、国全体の経済成長、景気刺激という点で合理的である。

経済学的に定量的に分析すると、我が国の若者の所得の低下と少子化、新築住宅を購入できる中産階級の貧困化を考慮に入れて計算すると、Amishの比較優位の法則の正反対の方が、21世紀の成熟型日本経済の環境下では、むしろ今、定量的に考えても経済合理的だと説明できるに違いない。経済学者の研究に期待したい。